私の結婚式の案内を発送した日の夜、突然父が風呂で亡くなりました。
来て下さった医師によると、脳内出血の可能性が高いとのことでした。
警察が預金通帳と生命保険を見せてほしいとその場で言いました。
お人好しの母は、なんだかお手伝いいただけるのだと思って感謝しつつ一生懸命見せていました。
保険などは加入時期が古いものばかりで、すぐ事件性はないと判断されました。
今は個人情報保護などの影響で、すぐ預金が引き出せなくなる事も必ずしもないようですが、当時はあっという間に全ての父の口座は凍結されました。
戦前の民法の「妻は無能力」という発想が残っていた両親の世代で、母が実家から相続していた財産も多くは父名義にしていたような記憶があるので、父の突然の死亡で、母は大変だったかもしれません。
まだ定年になる前の死亡でしたし、我が家は転勤が多くて地元に知り合いも少なく、確か警察の人に聞いて葬儀社、お坊さんをお願いしたと思います。
子供にとって父が死ぬなんて言う事は青天の霹靂で、ショックが大きく、母に「お葬式は葬儀社が提示した中で一番良いお葬式で送ってあげてほしい」と頼んだことがあります。お父さんが働いてくれての財産だからと。
宗派の違うお坊さんを紹介されて、当時はネットも無いので私が電話帳で父の実家の宗派を探してお願いし直しました。
最初のお坊さんは言葉を濁しながらかなり高額な戒名代を請求してきました。
後でお願いした父の宗派のお寺は三万円のお布施にさえ律儀に領収書をくれてむしろ驚きました。
一か月ちょっと後に私の結婚式が予定されていたので、その準備もあり母は心身共に大変だったと思います。
みるみる痩せましたし、その後癌を発症したのもこの時の大変さが影響したと申し訳なく思いました。
父は転勤が多く、父の職場が住宅を借り上げては社宅として提供してくれていたので父が亡くなった家は賃貸でした。
不動産屋さんから「風呂で亡くなって縁起が悪いから風呂場をリフォームして返せ」と言われました。
今は事故物件という定義がはっきりしてきて、別に孤独死して腐乱死体で見つかったわけでなし、言いがかりだと思いますが、その時は父の宗派のお坊さんが丁寧にお風呂場でも供養して下さって、又色々お話しくださってそれ以上は要求されなかった気がします。
これらの事から(警察に調べられるような事は滅多に無いにしても、)家族の通帳や生命保険証書はしまった位置など普段から把握すべきこと、預金はそれぞれの名義で持つこと、突然の不幸で慌てると葬儀代が法外なものになるので、普段から自分の宗派のお坊さんや葬儀社などについて、少しでも考えておく事などが教訓となりました。
父の亡くなった後に父方の祖母が亡くなりました。
父の兄であるおじが「印鑑証明をとって送れ」と言っていると母から伝え聞き、送りました。
今の私なら、代襲相続の相続放棄か祖母の家を売るに当たっての移転登記の義務者側としての添付書類に使うのかなとかと考えますが当時は何の知識もありませんでした。
もちろん私は印鑑証明以外には、一度も何かの書類に実印を押して送ってはいないのですが、三十年前は今よりもっと法令遵守の雰囲気は少なく、不動産屋さんか誰かが堂々と目の前で、印影を油紙で移しとってほかの書類にもうつしていたのを見た覚えがあるくらいなので、あまり書類や印影の偽造などのハードルが高くなかったかも知れません。
(おじが書類を偽造したと疑っているよりは、不動産屋さんなどのその時に事務処理をした人がやっていたのではと思っています)
風呂のリフォーム代を要求した不動産屋といい、弱肉強食というか言った者勝ちというかやはり知識を持ちしっかり対応しなければと思いました。
祖母の財産についてはそれほど執着も無いのであまり気にしていませんが、何となく「女子供で、なめられてたのね」とは思います。