カールベンクスさんのこと

 主人は昨年3月に定年退職したのですが、その一〜二年ほど前から私たちは「定年後は必ずしも東京にいなくちゃいけないわけでもないから、老後の生活をさらに楽しく過ごそうね」と考えて、新しい生活をどこでどんなふうに進めようかと様々な想像をして楽しんでいました。
 ほとんど収入にはならなくても良いから、体力の許す範囲で、あまり長時間でなくて、しかも自分が幸せを感じる仕事がしたいなあと思っていました。
 そんな妄想の中の1つが、私の「カールベンクスさんの所で、おしかけ事務員として使ってもらう」というものでした。
 カールさんはドイツ人建築デザイナーで、古民家に現代の良い所(床暖房や木製サッシの複層ガラスや断熱材など)を組み合わせて、素晴らしい機能を持った美しい建物に変えている方です。
東山魁夷の言葉を引用して語り、谷崎潤一郎の陰影礼賛を愛読書とするような日本への深い知識と日本の大工さんへの心からの敬意を持った方です。
そんなことで、コロナ前の夏にはカールベンクスさんをお尋ねしました。(前からファンクラブには入っていてカールさんの作品である美しい家々のことは知っていました)
 まず松代と言うところにあるカールベンクスさんの事務所をお尋ねし、そのあと竹所にもお伺いしました。
 松代北北通り商店街はカールさんの美しい建物が何軒も並んで、竹所とともにとても魅力的なところです。
主人は事務所の近くのお酒屋さんに入ってみてその品揃えの素晴らしさに感動して、半ば本気で「ここ(松代)に住んでもいいなぁ」と言っていました。私も松代のカールさんが再生した十日町市営釜田住宅 に空室はないかしらとか様々に妄想を膨らませていました。
尤もいざカールさんや事務所の方々にお目にかかりましたら、借りてきた猫の如く何も言えませんでしたが。
 著書にサインしていただき事務所や竹所をご案内いただきました。
カールさんの文章は美しく、田舎に対する賛美に溢れていて、さらに手斧(ちょうな)梁、差鴨居(さしがもい)黒漆喰、埋め木細工などといった日本人でも今やほとんど知らない言葉があふれるように出てきます。竹所の人々と自然を愛していて誰よりも深く溶け込んでいます。
 田畑を耕し雪かきをし、どんど焼きに盆踊り、クリスマスパーティなどの地元の子供たちを喜ばせる為のいろいろな楽しい集いも計画して強い信頼のきずなで結ばれています。
カールさんの奥さんのクリスティーナさんがテレビの中で「パラダイスというものがあるとしたらここ(竹所)がそうよ」と言っていらっしゃいました。
まさにお二人は、日々の生活を愛情と尊敬を込めて丁寧に送ることで、絵のように美しいパラダイスを作り出していらっしゃいます。

 

  

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